遺産(相続財産)の調査について

 

遺産の内容は様々です。被相続人が思いも寄らなかった財産を持っていたなんてことは珍しいことではありません。
ですから遺産(相続財産)の調査というのが重要になってきます。

 

1 遺産となる財産の具体的調査方法

(1)不動産

不動産の所在が判明していれば登記簿(全部事項証明書)の取り寄せにより調査します。
不動産があるらしいことだけしかわからない場合でも,名寄帳を取り寄せることで調査することができます。

 

名寄帳とは,一個人が所有している不動産の一覧表です。

自治体によっては,「土地家屋課税台帳」とか「固定資産課税台帳」などと呼ばれることもあります。

 

各地方自治体に存在する不動産の所有者が一覧できますので,遺産が発見できることもあります。
その他,固定資産税納付通知書から不動産が発見できることもあります。

 

被相続人宛ての郵便物を探してみることも一つの方法です。

 

(2)預貯金

預貯金通帳が残っているなら,これによって預貯金の有無がわかります。
預貯金通帳がなくとも,金融機関から残高証明書を取り寄せて調査することができます。
なお,通帳もカードも残っておらず,口座番号等がわからない場合でも諦める必要はありません。金融機関名と支店名程度がわかっていれば残高証明書を取り寄せてみる価値は十分あります。

 

(3)株式,社債,投資信託,ゴルフ会員権

① 株式

株券,配当通知などがないかどうかを確認します。
これがなくとも,会社に直接問い合わせを行って確認する方法や,会社から株主名簿を取り寄せる方法もあります。

 

② 社債,投資信託

金融商品取引業者からの通知がないかどうかを確認します。
資産明細は証券会社から入手することになります。

 

③ ゴルフ会員権

会員証がないかどうかを確認します。
ゴルフバッグの名札等から会員権の存在が判明する場合もありますので,被相続人がゴルフを趣味にしていた場合は,調査をしてみる価値はあるでしょう。

 

(4)動産

一般に動産は価値が低いことが多いので,遺産分割まで行わずして分配してしまうこともよくあります。

 

しかし,宝石,コイン,書画,骨董品等の価値のある動産については問題となることがあります。
自宅に金庫等の貴重品保管場所があれば調査が必要でしょう。

 

特に貴重な動産については,銀行の貸金庫内に保管されていることもあります。その場合は貸金庫の調査も必要です。貸金庫の有無も不明な場合であれば,被相続人の取引銀行支店等に対して照会をかけて調べることも必要です。

 

(5)債権

被相続人が,誰かに金銭を貸し付けていた,その他未回収の代金債権を有していた,そんな場合は,その債権の相続も問題となります。
ただ,この場合は,具体的な契約書等の存在を調査して,債権の存在を明らかにする必要があります。

 

3 これは遺産になりますか?

(1)生命保険金は遺産になりますか?

被相続人が生命保険をかけていれば,被相続人の死亡によって多額の生命保険金が支払われることになります。果たしてこの生命保険金は遺産となるのでしょうか。
生命保険金は受取人が指定されることが多いかと思います。

 

このように生命保険金の受取人が指定された場合は,遺産とはなりません。

 

この場合は,保険契約によって受取人に保険金が支払われることになるだけなのです。ここは勘違いをされる方が多いところです。

 

これに対して,受取人が,具体的に指定されず,単に「相続人」と指定されていた場合はその分け方を決めるために遺産分割協議を行う必要があります。この点は注意が必要です。

 

ですので,いずれにせよ生命保険については,生命保険証書等を調査したり,生命保険会社への照会が必要になります。

 

(2)死亡退職金は遺産になりますか?

死亡退職金に関する支給規定の内容次第ですので,一律には決まりません。
個別に退職金支給規程等を検討する必要があります。
たとえば,国家公務員の死亡退職手当,私立学校法人の職員の死亡退職手当等は,遺族の生活保障を目的とするのが一般的であり,遺産とはならないとされています。

 

 

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