寄与分・特別受益

 

1 寄与分~被相続人への貢献

【相談内容】

私は,亡くなった母を長年自宅で介護してきました。しかし妹は全く母の介護はしてきませんでした。私と妹の相続分が同じというのは納得できません。私の介護の事実は相続に反映されることはないのでしょうか。

 

【回答】

寄与分の主張が認められる可能性があります。寄与分を明確にするためには家庭裁判所で別途寄与分を確定する調停や審判を行う必要があります。

 

【解説】

(1)寄与分とは

寄与分という制度は,共同相続人の中で,被相続人の財産維持又は増加に特別の貢献をした者があるとき,その貢献を相続に反映させるものです。
寄与分と評価された金額が相続財産から差し引かれて,貢献者はその寄与分を受け取ることができるのです。

 

(2)どのような場合に寄与分が認められる?

① 相続人の寄与
まず相続人が寄与したのが前提です。単なる友人が貢献しても寄与分の主張はできません。
② 特別の寄与が必要
次に,「特別の寄与」であることが必要です。親族間の扶養義務の範囲内の行為では「特別の寄与」とは認められないので,長年小遣いを送金していたといっても,よほどの金額でもない限り寄与分とは認められないでしょう。

 

ご相談の介護のケースですが,一つの目安は被相続人であるお母様の病状の程度です。
たとえば被相続人が要介護2以上の状態であり,継続1年以上自宅での介護を継続していたような場合であれば,いわば被相続人がヘルパーさんを使う費用を長きにわたって免れていたといえます。

 

こうしたケースでは寄与分として認められる可能性があります。

 

(3)寄与分をめぐる紛争は多い。迷ったらご相談を。

寄与分の主張というのは非常に多いですが,上記のように,寄与分が認められるかどうかというのは非常に難しい判断を伴います。

 

個別の事情の検討が必要ですので,個別にご相談いただくことが重要かと思います。

 

2 特別受益~被相続人からお金等をもらっている場合

【相談】

父が亡くなったのですが,長男の兄は父に私立の医学部の学費を全部出してもらっていますし,結婚式の挙式費用も全部出してもらっています。私も含めた他の兄弟は大学にも行かせてもらっていません。長男の相続分から学費分や挙式費用は引かれるのではないでしょうか?

 

【回答】

特別受益の問題ですね。医学部の学費は特別受益として差し引かれる可能性はあります。挙式費用については一般的に特別受益とはならない可能性が高いです。

 

【解説】

(1)特別受益とは

特別受益というのは,被相続人から,生前に贈与を受けたり,遺贈を受けたりした相続人がいる場合,その贈与分や遺贈の分を考慮して相続を行うものです。
単純に言えば,特別受益分は,相続分から差し引かれることになります。

 

(2)特別受益の種類

① 遺贈
遺贈とは,遺言によって相続財産を無償で譲渡することですが,これは全て特別受益になります。
② 生前贈与
被相続人が生前に贈与をした場合は,それが相続財産の前渡しと評価されるかどうかで特別受益となるかどうかが判断されます。

 

たとえば,婚姻の際の持参金等は,特別受益として評価されることが多いでしょうが,結納金や挙式費用は一般的には特別受益とはならないことが多いです。

 

大学の学費については,家庭の状況にも関わりますので一概には言えません。ただ,ご相談事例のような私立医学部の入学金のように特別に多額なケースであれば,特別受益となる可能性があります。

 

(3)特別受益で悩んだらお気軽にご相談を

いずれにしても,個別の色々な事情から判断されます。これは特別受益になるのではないか?とお悩みの際は,是非ご相談下さい。

 

 

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